手間ひまを惜しまず、
不知火に愛情を注ぐ
永田さん:はい。30年ほど前に不知火の存在を知り、「皮がむきやすくてとても甘い。これは人気が出る!」と、すぐ栽培に取りかかりました。甘夏ミカンと平行して育て始め、少しずつ不知火の割合を大きくしていって、3年前に完全に不知火だけになりました。
甘夏ミカンと不知火は、温暖な気候など、栽培に適した自然条件が同じ。「甘夏ミカンで成功した田浦なら、おいしい不知火が育つ」という確信があったんです。ただ、糖度が高い不知火は栽培方法が難しく、この30年間は施行錯誤の繰り返しでした。
永田さん:植物の養分は、上の方に流れる性質があるので、全ての実に養分が行き渡るよう、実が小さいときにひもで吊り上げます。枝が折れたり、風で実が傷付いたりするのを防ぐ意味もあります。7~8月の暑い時季、約6万個を吊り上げていく作業は大変です。
また、糖度が高い実を育てるために、余分な実を摘み取る作業も大事。木によって適当な実の個数はだいたい決まっていますが、これは長年の経験から予測をしています。
永田さん::それはもう、失敗は数えきれないほど(笑)。実を吊るし上げる作業を省いて、台風で全て全てパーになったこともあります。自然が相手ですから、「去年こうだったから今年もこうだ」という「絶対」はありません。でも施行錯誤しながらあれこれ挑戦するのは楽しいですね。やはりこの仕事は天職なんだと、感じています。